小笠原猫プロジェクト

獣医師としての活動に加え、中川清志がいま取り組み、実践していること、のひとつが、小笠原猫プロジェクトです。これは、絶滅に瀕した珍しい野鳥を食べてしまう山で生きる猫を、捕獲し、保護し、お引っ越しのお手伝いをしています!

ある日連絡が入ったんです。
「ネコの殺し方を教えてください」って。

ここ10年位は小笠原。そもそもは母に「どう?」って言われて、行ってみたんですよ。そこには当時絶滅に瀕して40羽しかいない鳩(アカガシラカラスバト)がいて、それがどうやら野生の猫に食べられてるらしくて、島で鳥の研究をされてる方が困り果てて、もう猫をとりのぞくしかないってなったんですけど、たとえば、200頭を捕獲したとしても飼えるわけでもなし、もう殺すしかないってなって。でも、真面目な方たちだから、人道的な方法、苦しめない、とか、恐怖感をあたえないっていうのを模索していて、それで幸いにも獣医師会に連絡が入ったんです。
「ネコの殺し方を教えてください」って。
そして、それを受けた獣医師会の当時の副会長の小松先生が、ネコだって生きてるんだし、ってことで何頭かを輸送したことから、この話は始まるんです。

当初は山育ちの猫にひるんだらしいんですよ。檻の中に大きな猫がいて、跳ねると、ドーンって音がして、猛獣ですよね。だから、こんなの馴れるわけがないって思ってたらしく。でも、二ヶ月も過ぎる頃にはもうベタベタで。まるまると太っちゃたりして。それで、獣医師会の有志を募って、もらい手探しを始めたんです。

とはいえ、山の猫を捕まえるだけでは追っつかなくて、子猫が増えることも抑制しなくてはならなくて。で、子どもを産むのは意外と山中より街で餌付けされてる野良猫で、私たちは、蛇口締めと言ってるんですが、そこを何とかしないといけない。とはいえ、行政や鳥の研究者が「おたくで世話してるタマちゃんが外で幻の鳩を食べちゃうんで、家で飼っていただけませんか?」って言っても、なかなか通じないし。

そんなとき、獣医師が島に行って、住んでる方のペットの健康診断からはじめると、人は集まってくださるじゃないですか。そこで「ネコもかわいいけど、トリもかわいいからさ」とか語りかけると、話を聞いてくれるんですよ。そうやって、待合室に写真を展示したり、ポスターを貼ったり、あるいは環境省や都や村のスタッフが説明にうかがったりして、徐々に意識が変わっていったんです。

ええ、この15年で40羽だった鳩が500羽まで持ち直したんですよ。目標は1000羽だからまだ途中ですけど、世界的にも珍しい事例ですよね。

新しい飼い主探しの窓口は動物病院で、この15年で1000頭を超えました。うちでは去年は3、40頭、トータルで250頭くらいですかね。ちなみにいま病院では4頭を飼っているんですよ。

もともとうちの病院は地域で野良猫の受け皿になってたっていうか、こどもたちが拾ってきた猫を一日500円いただいて、預かって、新しい飼い主さんをを探すとか、そんなことをしてきたんですよね。だから、母の、どう?っていうひとことが、すんなり入ってきたのかもしれませんね。

Follow me!