学校飼育動物活動の最上位目標

私は、母と共に実践をしてきた中で、学校飼育動物活動の最上位目標は、子どもたちが愛着を抱いた相手の死を体験すること、と考えています。

「なぜ、自死をしてはいけないのか、人を殺してはいけないのか?」

この命題に明確な回答を伝えることは難しいです。

愛着を持った、自分たちが大事にお世話をしていた動物が亡くなった時、子どもたちは、魂の半分が持っていかれるような、そんな辛さ、悲しみを体験できるでしょう。

その時,担当獣医師である私は、検死を行った上で、

「この動物が死んだのは君たちのせいではないよ。ちゃんとお世話ができていたね。」

「今、君たちはとても辛いよね。悲しいよね。」

「もしもね、君たちが死んでしまったら、周りの人たちもとても悲しむのよ。この後、学校から帰る時も、交通事故に遭わないように気をつけてね。死んじゃだめだよ。」

「そして誰かのことを傷つけたり、殺しちゃったりしたら、その子の周りの人達がどんなに悲しむか。そして君の周りの人たちも、どんなに悲しむか。そんなこともしちゃダメだよ。」

といったようなお話をしています。

言葉や映像、知識では伝えることのできない、自分で体験することでしか、身に染みなければ、わからないことがあると思うのです。

その一つが、愛着を持った対象の「死」の体験に伴う「辛さ」、「悲しみ」だと考えています。

子どもたちが、学校で飼っている動物たちに愛着を持ち、自分達の動物と感じるためには、子どもたちが、安心して動物をお世話できる環境が必要ですし、自分達が最後まで面倒を見るという認識が必要でしょう。

西東京市では、学校飼育動物活動を以下のように位置付けています。(西東京市議会令和4年第3回定例会 中川の一般質問に対する教育長答弁)

1.生活科や総合的な学習の時間、特別活動などに位置付け、理科や道徳科等と教科横断的な関連を図りながら、人権教育や道徳教育、生命尊重教育を推進することで子どもたちの自己肯定感や自尊感情の醸成に資するものとして取り組む 

2.学校の長期休業中に、動物飼育の活動を地域社会の皆様に引き受けていただくことで、保護者や地域の皆様が学校に足を運びやすくなることから、社会に開かれた学校づくりの一環として貴重な取組である 

3.東京都獣医師会との連携の下に、学校における動物飼育活動が一層充実するよう、優れた実践事例の提供や各学校の実態に応じた指導・助言を行う

すなわち、

1.教科などに位置付け、人権、道徳、生命尊重教育を目的とする

2.保護者や地域と連携する

3.獣医師会と連携する

この3点があることで、子どもたちの成長につながる体験をさせることができ、教育として高い効果を発揮していると感じています。

11月20日に行われる、東京都獣医師会 学校動物獣医師養成講座では、西東京市教育部教育指導課長の山縣先生が、本市における取り組みについてご講義くださいます。

本市における、学校飼育関連予算は、それぞれ1校につき「飼料費」 3万円、獣医師会に対する委託費 6万円です。

私が担当する保谷第二小学校では、それ以外に「特色ある学校推進事業費」の8万円も使用しています。

各基礎自治体が、この教育の意義を認識すれば、十分に捻出できる額でしょう。

土日祝日や長期休業中は、飼育担当学年の保護者と児童や、地域学校協働活動などで、保護者や地域と共に支える学校が多いです。

色々な理由を付けて子ども達から、体験を取り上げることは簡単です。

子ども達にとって将来の財産となる、様々な体験をどのように与えていくのか、地域の大人達がしっかりと取り組んでいく必要があると考えています。

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